保育園は女性が多い職場です。というか、女性しかいない保育園も多いですね。
保育園は基本的に、子どもがいる親が”仕事と育児の両立を支援するため”にある施設です。
そんな保育園でマハタラがあるなんて信じられません…。許されません。
今回は、保育園の経営・人事を10年経験し、現在は保育園コンサルと転職エージェントとして活動する私が、実際に相談を受けた事例などを交えてマタハラについてお話しします。
保育園のマタニティー・ハラスメント
マタハラは一般企業の場合、「男性の、妊娠や出産への理解が不足していること」で起きるのですが、女性だらけの職場の保育園でもマタハラは起きています。
保育園でマタハラが起こる原因は、これまた「保育士不足」です。
保育園は”働く女性が子育てと仕事を両立させるため”の施設にも関わらず、保育園でその両立を阻止するマタハラが起きる…。
「気が狂ってんのかーーーー!!」
と叫びたくなります。
保育園が仕事と育児を両立の助けることで、女性の社会進出の支援と少子化対策になる、国として超重要な施設です。
そして、保育士はその超重要な施設で働く、超重要な人材です。
その保育士さんにマタハラを行い退職に追い込むなんて、訳が分かりません。保育園の存在を否定するような行為ですよね。
しかし、残念ながら保育園はマタハラが起きやすい条件が揃っているんですね。
保育士にマタハラをする保育園が多い理由
では、保育園でマタハラが起きやすい条件とは何でしょうか。
- 年度替りにしか保育士を確保できないことが多い
- 妊娠、出産の経験がない保育士が多い
- 産育休制度が身についてない
それぞれ掘り下げていきます。
年度替りにしか保育士を確保できない
保育園は、基本的にクラス配置を決めると1年間同じメンバーで回します。
途中で保育士が変わったり辞めたりすると保護者も文句を言ってきますよね。
また、保育士不足によって、代わりの保育士が確保しづらい状況にあります。年度末まで代わりが確保できないことも多いです。
よって、年度途中で抜けられるのは、保育園側はとても困ります。
だから、保育士さんは年度替りで退職する方が多い訳です。年度途中で抜けられると、保育園側が文句を言いたくなる”気持ち”も分からなくはありません。
気持ち”だけ”はですよ。
妊娠・出産の経験がない保育士が多い
公立保育園や人気の保育園は、保育士の年齢がバランスよく配置されている施設が多いですが、一般的な私立の場合は20代〜30代が多く配置されている傾向にあります。
20〜30代の保育士の割合が多いということは、まだ妊娠・出産したことがない保育士も多いと言うことです。
妊娠・出産の経験がないので、妊娠に対する理解ができないんですね。
さらに、子どもを産むという選択をしなかった保育士が保育一筋で出世していき、園長になっていることも多いです。
この妊娠・出産を経験していない園長は、とんでもないマタハラを起こす可能性があります。
もちろん起こさない人もいますが、とにかくマタハラの根本にあるのは理解不足です。
産育休制度が身についていない
昔は、結婚・妊娠・出産を期に退職する人が多かったです。現在、潜在保育士が多い理由の一つですね。
保育士は昔は更に給料が安かったので、働きながら子育てする価値がなかったですし、保育士は子育てに自信を持っていますから、子育てを自分で全部やりたいと思う人も多く、専業主婦になる人が多かったです。
よって、現在の主任や園長格に多い世代の人は、”保育士は妊娠したら辞めるもの”と明らかに間違った考えを持っている人も多いんです。
妊娠したら辞めるものという、悪しき風習に染まった保育園の園長は、当然、産育休制度について無知だったりします。
どんな理由があろうと、妊婦をいじめるのは違法ですよ!!
保育園ではどんなマタハラが起こる?
さて、それではどういうことをするとマタハラなのかをご説明します。
大きく言えば、妊娠や出産を理由に肉体的・精神的な苦痛を与えることや、解雇なり退職に追い込むことです。
つまり、妊婦や子育て中の女性に嫌がらせをすれば全部マタハラです。
具体的にはどのようなことがマタハラになるのでしょうか?
見た目の文句
スタイルに関して嫌だと思うことを言うのはマタハラです。
仲が良くて何を言っても許されるような仲なら良いですが、「あれだけスタイル良かったのに、もはやデブやん。」みたいなことを言うのはマタハラに該当します。
あとは、嫌味で「そんなお腹じゃ、○○できないでしょ」とか言うのもですね。
価値観押し付け
相談された時に上司が自分の考え個人的に言うのは良いですが、「母親は家庭に入れ(辞めろ)」とか「子どもは何歳ごろに作るべき(その妊娠は間違いだ)」とか上司の価値観を”押し付ける”のはマタハラになります。
保育園の場合は、「年度途中で辞めるのはおかしい!」とか「年度末までしっかり働け!」みたいな文句を聞く事はよくあります。
でも、これらの発言を、産育休までの期間が決まっている妊婦にするということは、”退職に追い込む”もしくは”中絶を指示”しているという発言にも取られ、とんでもなく違法性の高い発言です。
違法というか…、純粋に人として恐ろしい発言ですよね。妊婦に文句を言って、最終的にどうしたいのか…。
平等アピール
「妊婦でも皆と平等に扱うから」的な平等アピールもマタハラになる場合があります。
「正社員なら全く同じ時間働いてもらう。」とか、「残業しない奴は正社員じゃない。」とか、妊娠や育児をしていない正社員と無理に同じだけ働かせるのはマタハラです。
そもそも、体調不良で休んだり早退したら、その分は給料から引かれることもあります。
働かなかった分はちゃんと給料から引かれているので、文句を言われる筋合いはありません。
嘘制度
「ウチの園は育休取れないので退職になります。」とか、「産育休を取ったら将来は無い(出世させない)」など、会社が独自で作った違法な規則を押し付けるのもマタハラです。
そもそも、ブラック保育園でもそんな制度ある訳ありません。
嘘をついて退職に追い込もうとしています。
産育休は会社が決める制度ではなく、国が決めている制度ですから騙されないでください。
マタハラを受けた保育士のできる対処法
「マタハラを許すな!」と言って戦いたいのは分かりますが、何よりも優先すべきは「母子の健康」です。
無理に頑張りすぎて、子どもに悪影響が出るのは絶対に駄目です。本当に命に関わる問題です。
子どもばかり気にしていたら、自分自身の体がボロボロになっていた…というケースもあるので、自分の精神状態や健康状態にも気を配りましょう。
転職
妊娠直後に転職するのは流石に少し厳しいです。
保育園側もすぐに戦力なる人が欲しいので、すぐに産育休に入る人を積極的に採用するかは…何とも言えません。
しかし、それでも先を見越して(つまり産育休明けの戦力として)、採用してくれる保育園は沢山あります。
このままでは母子の健康に被害が及ぶと思ったら、妊娠が分かった後に転職活動しても良いと思います。もちろん体調と相談ですが。
産育休のために我慢
産育休は制度としては素晴らしいです。
よって、なんとか我慢して産育休を取って、1年休んでリフレッシュするという作戦もあります。しかし、最優先は母子の健康ですので、無理は禁物です。
産育休の制度については、こちらの記事で勉強しておきましょう。
相談
相談する場合、相談先は内部と外部になります。
それぞれ説明します。
内部に相談
まずは、上司はマタハラをしていなくて、先輩や同僚にマタハラを受けている場合は、もちろん園長や主任などの上司に相談しましょう。
次に、会社にはマタハラ対策の窓口が設置されています。その窓口や人事に相談しましょう。
しかし、形だけ設置されていて、役目を果たしていない場合も多々あります。
最悪の場合、会社や保育園そのものがマタハラを推進するような考え方の場合もあるので、窓口に相談してもマタハラを受けるかも知れません。
そういう場合は外部に相談しましょう。
外部に相談
マタハラを撲滅したいと思っている団体は数多くあります。非常に多くありますので、ここではメジャーどころを紹介します。
内部に相談できそうにない、相談しづらい場合は、以下に相談してみて下さい。
- 行政では、ハラスメント行為は労働局が担当です。◯リンク▶労働局サイト
- 弁護団もおすすめで女性弁護士が対応してくれます。◯リンク▶女性弁護士による働く女性のためのホットライン
もし、ストレスが多くて健康に被害が出そうな場合は、旦那さんに協力してもらいましょう。
しかし、マタハラの原因は一般企業では「男性の妊娠・出産に対する理解不足」です。
旦那さんも男性ですから、理解が不足しているかも知れません。
よって、旦那さんに相談しても「じゃあ、辞めれば良いやん」みたいな事しか言わず話にならないかも知れません。
その場合は、親などの家族を頼りましょう。とにかく、1人で抱え込むのは駄目ですよ。
さいごに
ブラック保育園の場合は、いかなる場合も転職をオススメします。
しかし、妊婦の状態で転職活動をするのは、転職上も不利ですし、体も疲れます。
マタハラ・転職の、疲労やストレスで体調に影響が出たら大変ですので、簡単に「こうすべき!」と言えない難しい問題です。
産育休制度が素晴らしいといっても、マタハラを受けた保育園に戻りたいとは思えませんし、身動きが取りづらい妊婦にマタハラを仕掛けるのは、本当に悪質ですよね。
これまで、保育園や子ども、その保護者のために頑張ってきたんですから、妊娠した時くらい自分に優しくしてくださいね。