教育原理は、社会的養護と同時に合格しなければならない、難関のニコイチ科目です。
社会的養護が簡単な時は教育原理が難しく、社会的養護が難しい時は教育原理が簡単な印象です。
教育原理と社会的養護は、ニコイチなのにそれぞれが難しい科目です。
ただ、教育原理と社会的養護は他の科目と内容が被っていますから、避けずにしっかり勉強しましょう。
今回は、保育士試験の教育原理についてまとめましたので、ぜひ確認していってください。
保育士試験の教育原理とは
教育は、保育の5領域ではなく、幼稚園や学校における教育のことを指しています。
原理というのは、”根本的な法則・規則・理論”のことです。
よって、教育原理では、”教育の根本的な理論や規則”について勉強する必要があります。
つまり、保育士試験では、教育の理論を作ってきた過去の偉人たち、そして教育に関する制度・法律を中心に勉強していかなければなりません。
教育原理の対策
教育原理を勉強する方法ですが、ほとんどが”暗記”になります。
ひたすら暗記です。
また、「教育の”原理”を勉強しているんだ」と分かっていないと、何やら人やら法律をどんどん連発されて、覚えるに覚えられません。
何を暗記するのかというと、以下の4種に絞られます。
- 教育の歴史上の人物
- 教育の規則・法律
- 諸外国を含む教育制度
- 教育の実践
教育原理に限らず、何を勉強するにも歴史は重要です。「なぜ今、こんなことをしているのか?」を知るためです。
よって当然、スキナーのプログラム学習やブルーナーの発見学習のような、教育に影響を与えた歴史上の人物を覚えなければなりません。
そして、学習指導要領や憲法、教育基本法のような規則や法律を覚えます。
次に、日本がどのような体制で教育を行なってきたか、行なっているかを覚えます。日本の参考になりそうな諸外国の教育制度も出題されます。
最後に、これまでどのように教育を実践してきたか、どうやって実践していくかという、子供に直接行う教育の方法を覚えます。
今回の記事では、教育の実践については、頻出の評価の方法について書いています。
保育士試験で覚える重要人物
保育士試験に受かるには、様々な人物を覚えなければなりません。
人物名とその人がしたことは、最低でも覚えないと話になりません。
もう暗記をしまくるだけですが、単なる暗記ですと、ごちゃごちゃになりますので、”その人がどういう人だったのか?”というのを知ると覚えやすいです。
保育士試験では多数の人物が出てきますので、別記事にまとめています。
ただ、今回は教育原理についてのお話しですので、ここでは教育原理で覚えておくべき人をまとめます。
教育原理で覚えておくべき人物
教育原理では、子どもの教育に影響を与えた人物が出題されます。
これらの人たちが、教育の原理(ここでは理論)を作っていったので、覚える必要があります。
ペスタロッチ・フレーベル・ヘルバルト・デューイ・スキナー・ブルーム・ブルーナー・デューイ・キルパトリック・パーカースト・コメニウス・モンテッソーリ・オーエン・オーズベル
人物とやったことをセットで覚える必要がありますが、バラバラに覚えるのも大変です。
人は、時代や先人に影響されますので、その人たちの関係も合わせて覚えるのが良いです。
ルソーがエミールを書いて、エミールに影響を受けたペスタロッチが白鳥の歌(の中の「生活が陶冶する」が有名)を書き、ペスタロッチに影響を受けたフレーベルが”恩物”を作り世界初の幼稚園を建て、フレーベルに影響を受けたモンテッソーリがモンテッソーリ教具・モンテッソーリメソッドを考え”子どもの家”を建てた。
というように覚えれば、時系列も含めて覚えられます。
ペスタロッチは教育原理を学ぶ上では超重要で、ペスタロッチ主義という教育の考えも生まれ、アメリカや日本にも広まっていきました。
また、そのペスタロッチに影響を受けたフレーベルは、教育学者のデューイにも影響を与えていますので、ここからまた派生していきます。
ここでもう一つ関連づけて覚えて欲しいのは、そのデューイ派生です。
フレーベルに影響を受けたデューイは、”実験学校”を建てカリキュラムを実施していきます。デューイに影響を受けたキルパトリックのプロジェクト・メソッド、パーカーストのドルトンプラン、スキナーのプログラム学習と広がっていきます。
ここでは触れませんが、吉田松陰や貝原益軒、緒方洪庵などの日本人も出てきます。
先ほどの人物一覧リンクから確認しておきましょう。
教育の規則・法律
先ほども書きましたが、原理とは”理論・規則・法律”などのことです。
先ほどの重要人物によって理論が作られたことを知りましたが、規則や法律も教育”原理”を学ぶ上では欠かせませんね。
保育士には児童福祉法や保育指針が直接関わりがありますが、教育原理の試験は教育の問題が多いですので、教育基本法や幼稚園教育要領、学習指導要領から出題されます。
◆教育原理で確認しておく法律や規則
日本国憲法
教育基本法(特に重要!)
学校教育法
幼稚園教育要領
学習指導要領
特に、教育基本法は頻出どころか必出ですので、時間がある限り目を通しましょう。
「法律なんて覚えられっこない!」と思うかもしれませんが、教育基本法は全部で18条しかありませんので、丸暗記は無理でも、全部読むのに時間はそうかかりません。
何度も読むと良いでしょう。
例えば、こんな問題が出ます。
教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
これのどこかを抜かした穴埋め問題
この文は、教育基本法の第一条です。
”人格の完成”なんて言葉は保育では出てこない教育ならではの言葉ですから、知らないと人格の完成を目指すなんて発想にならないと思います。
次はこんな問題。
すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
この法律は何か?(実際は5択から選びます。)
「すべて国民は〜…」とか書いてあると、「憲法?」とか思っちゃいますが、これは教育基本法の第4条です。
読んだことなければ分かりっこないですから、絶対に読んでおいてくださいね。
文部科学省のページで読めます。
文部科学省▶︎▶︎教育基本法
諸外国を含む教育の制度
教育基本法や学校教育法によって定められた、日本の教育制度から見ていきましょう。
まず、教育基本法に教育行政という言葉が出てきます。”不当な支配に屈することなく、教育行政を行うべし”みたいな話なんですが、教育行政とは何でしょうか?
教育行政とは、文部科学省・教育委員会、そして地方自治体の長の三つを指していると考えてOKです。
次に、教育は学校によって行われますが、「そもそもの学校とは何か?」を確認しておきましょう。
学校教育法第1条に”学校とは何か”が以下のように規定されています。
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学および高等専門学校とする。
中等教育とは中学と高校の教育ですので、中等教育学校とは中高一貫校のことです。
高等専門学校は、いわゆる高専のことです。
特別支援学校は、障がいのある子や病弱な子のための学校です。
細かいところですが、馴染みがある内容ですからすぐ覚えられると思いますので、暇なときに押さえておきましょう。
諸外国の教育制度
教育先進国の教育体制も学んでおくことが、教育原理を学ぶ上では必要ですので、諸外国の教育制度に関する問題も出てきます。
(保育士の試験を受ける身からすると知ったことではないんですが。)
さて、日本の教育制度は、アメリカの都市部の教育制度に倣ったものです。
日本の小学6年、中学3年、高校3年の制度を、6-3-3年制といいます。
アメリカの教育制度
しかし、アメリカの教育制度は、6-3-3年制だけでなく、州や学区で異なり6-3-3年制だけでなく、8-4年制、6-6年制、5-3-4年制と分かれており複雑です。
しかし、全部を足すと12年になるところは共通です。
以前は6歳から18歳までの、12年間だったためです。現在は、6歳から15歳の9年間が義務教育となっており、義務教育期間は日本と同じです。
フランスの教育制度
フランスは義務教育が16歳までの10年間となっており、日本とだいぶ違います。
小学校が5年間で、コレージュ(中学校に当たる)というものが4年間あります。そして、高校や専門学校にあたる2〜3年制のリセで学ぶことになります。
フィンランドの教育体制
フィンランドの子どもの学力は高く、”学力世界一”ということで注目されました。
小学校に当たる”基礎学校”に7歳から通い始め、原則9年間の16歳で終わります。
ただし、入学年齢が弾力化されており、入学年齢を1年早めたり遅めたりでき、さらに義務教育を1年追加したりできます。
その後、16歳からは上級中学校や職業学校に進学しますが、3年間を基本として、2年で終えることもできるし、4年通うこともできます。
かなり個々の能力に配慮した制度になっていると言えます。
教育の実践|評価の方法
最後にどのように教育を実践しているか、実践していくかというお話しです。
現在の教育指導にたどり着くまでに、デューイ(経験主義)やキルパトリック(プロジェクト・メソッド)、スキナー(プログラム学習)、ブルーナー(発見学習)、オーズベル(有意味受容学習)これらの人々の理論が元になっています。
よって、保育士試験の教育原理の問題には、人名だけでなく教育理論の内容も出題されますので、理論の内容も覚えなければなりません。
プロジェクト・メソッドとは何か?発見学習とはなにか?など、テキストで一通り確認しておきましょう、
そして、教育も時代に合わせて今も変わってきていなすので、ICTやネットの問題が出題される可能性もありますが、よく出てくるのは”評価の方法”です。
保育では、ねらい・配慮・反省などでPDCA風の計画を回していきます。教育の場合は、”評価”によって授業を改善していくので重要という訳です。
そこで、ここでは学習の評価の方法について説明します。まずは、基本の評価方法の2つです。
相対評価
相対評価は、学校の通知表に使われているのが一番身近だと思います。5段階評価ですね。
他者との比較や序列によって評価する方法です。
評価する側も簡単です。優秀な子から順にABCとか1~5で評価するだけですからね。
ただ、集団に準拠した評価と言われ、集団の質によって客観性や信頼性に乏しいという指摘があります。
学校のレベルや地域性によって、同じAや5でも差が出ますからね。
極端な例だと、日本の学校で5の評価を受けた人と、アフリカの学校で5の評価を受けた人が、同じ学力の訳がないということです。
絶対評価
他者との比較である相対評価に対して、絶対評価はその個人が目標・基準に達したかどうかを見る方法です。
出来たか出来なかったか、で評価します。
周りの人たちに左右されない上、改善点が分かりやすいので、本人の納得度も評価のしやすさもあります。
少なくとも、相対評価に比べて客観的な評価は出来ますよね。
ただし、評価の基準の設定が難しいという点があります。
例えば、簡単な基準の場合、全員が満点を取ると、全員がAとか5になってしまいます。
内申点のような、ちょっと教師の力量によるところが大きく、逆に客観的じゃなくなる可能性もあるんですね。
よって、相対評価と絶対評価のどちらが優れているという訳ではなく、両方を上手く使うのが大事です。
ブルームの教育評価|評価の方法2
ここからは、ブルームが提唱した完全習得学習のため考えた、3つの評価法についてご説明します。
これらは、学習の前・途中・最後に行うもので、評価するタイミングについての話であり、評価の方法は相対的評価と絶対評価になります。
診断的評価
診断的評価とは、子どもがどのレベルの知識や技能を持っているかを見ることです。
状況把握をするための評価で、基礎学力テストや適性テストがこれに当たります。
どのレベルにあるのかを先に確認しておくことで、授業の計画を立てる際や補習の計画に役に立ちます。
とにかく、事前にする評価ということです
形式的評価
評価というと普通は最後にテスト的なものを交えて行うものと思いがちですが、この形式的評価は授業の途中で評価する方法です。
縄跳びをするなら、縄跳びが出来る前に、手の持ち方、飛び方はどうかを見ていくというイメージです。
中間テストをイメージすると少し違います。
教育者側はこまめにこの形式的評価を行い、子供がしっかりと習得できるように自分の指導法を確認していくのが必要です。
次のステップに進めるかどうかを判断して、授業の方向を決めます。
つまり、途中で行う評価ということです。
統括的評価
これが現代日本人におなじみの、総まとめ評価です。
期末テストや通知表、卒業に認定などがこれに当たります。
最後に行う評価ですね。
これまでは統括的評価として、テストを行い相対評価で序列をするだけでしたが、今後はさらに新たな評価方法が必要であるとされています。
(おまけ)ポートフォリオ評価
こちらはブルームの提唱したものではありませんが、統括的評価をより良いものにするために考えられた評価方法です。
テストで序列化する相対評価が便利なことも多いですが、関心や意欲や態度など、全体を評価する際には、子どもが行なった活動の過程も評価すべきですよね。
このポートフォリオ評価は、学習活動において子どもが作成した作文、レポート、作品、テスト、活動の様子が分かる写真や動画などを保存しておいて、それを教育者が評価する方法です。
イメージとしては、自己PRやプレゼンして成果を発表する感じです。
まだまだ浸透していない評価方法ですが、今後の評価手法として注目されています。
おわり
暗記ばかりの教育原理ですので、この記事ではあまり掘り下げられませんでしたが、教育原理を突破する上で…
- 人物とその著書や理論を覚える
- 教育基本法を中心に法律・規則を覚える
- 評価の方法を覚える
この3点は押さえておきましょう。
過去問を見ても、幅広い範囲で出題されていますが、人物に関する問題と教育基本法は必ず出ますので、頑張って覚えてくださいね。
教育基本法はこの科目でしか使いませんが、人物は他の科目でも使えますから。
それでは、試験の合格を祈っております!
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