ブラック企業ならぬブラック保育園。
保育士は圧倒的な人手不足で、一部では待機児童と保育士不足は永遠に解消しないという声も上がっています。
この保育士不足の中、ブラックな経営体質では「保育士を集められずに閉園」というリスクがあるにも関わらず、ブラック保育園はまだまだ存在しています。
実は、入社してみないと本当にブラックかどうかは確認できません…。
しかし、求人票を中心に少しの手間や注意で、「怪しい…」かどうかは分かります。
今回は、実際に求人票を作っていた側の私が、求人票の見方を中心にブラック保育園の見分け方をお話しします。
ここでのブラック保育園の定義
あ、ちなみに私が人事の責任者をやっていた保育園は、全くブラックではありませんよ。
さて、何をもってブラックと呼ぶのかを決めておきます。
ブラックは、グレーゾーンという言い方から発展した言葉で、正確な意味は曖昧です。
よって、ここでは、ブラックの定義を「明らかに違法・嘘をついている」ということにしてお話します。
ブラックにも「ワザとブラック経営にしている」、「ブラック気質の経営者が無意識にブラック経営している」、「やむを得ずブラック状態になっている」の3パターンがあります。
ブラック保育園の特徴
さて、ワザとブラック経営にしていたり、ブラック気質の経営者が無意識にブラック経営する理由ですが、人件費を違法に削減することで、めちゃめちゃ儲かるからです。
保育園の経営は、立地などによりますが人件費が6割~8割になります。また、収入は園児数に応じて補助金が決まりますので、基本的に固定されます。
よって、人件費を削減することが儲けの近道なのです。そして、人件費削減の最も簡単な方法が、サービス残業をさせることです。
次に、昇給しない、ボーナスが払われない、、退職金が支払われないなどがあります。
サービス残業は明らかな法律違反なので、その時点でブラックなのですが、頭のいいブラック企業はサービス残業をしていることすら気づかせない仕組み作りをしているところもあります。
◆ちなみに
「やむを得ずブラック状態になっている」というのは、たまたま保育士の退職が重なるなどの不測の事態や、経営や集客や求人が下手で、給料やボーナスを支給できなかったり、保育士確保が出来ずに長時間労働をしてもらうしか無い状況に落ちいている保育園のことです。
この場合、この状況が改善されれば、ブラック経営は解消されて、通常の保育園経営に戻る可能性があります。
それでは、ここまでの情報を踏まえて、ブラック保育園のブラック求人票のポイントを見てきましょう。
ブラック求人票の内容で気にするべきポイント
求人票だけでブラック保育園を見極めるのは、非常に難しいです。しかし、ブラックの可能性は求人票で、少しは推測できます。
もっとも気にすべきポイントは、給与・待遇などの労働条件がハッキリしているかどうかです。どんな手当構成になっているのか、どうすればこの待遇を受けられるのかなど、しっかり伝える気があるかを見ましょう。
とりあえず求人票で釣って応募数をかき集めようとしている求人票に引っかかってしまうと、面接などで幻滅し時間の無駄になります。
給料の幅が広すぎ・高すぎ
給料の幅が広いと、経験に応じてそれなりに評価されるかな?と思うかも知れませんが、低い方に寄せられる可能性もあります。(月給22万~35万円みたいなことです。)
求人票の中で、保育経験ゼロの人と保育経験20年の人を、まとめて書いているかも知れません。しかし、分かりにくい(=ハッキリしない)ですよね。
分かりにくく書く、つまり、釣り給料(若い人でも高い給料がもらえると勘違いさせようとしている)の可能性があります。
また、同じ条件なのに他の保育園から比べると抜きん出て高い場合、これも注意が必要です。
先程も少し書きましたが、保育園の場合、収入はほぼ固定されています。よって、他を圧倒する高い給料を出せるわけが無いのです。
これは、固定残業代を含んでいるのに固定残業代の記載がない、ボーナスが少額で月給に割り振られているなど、何かの理由があって高い給料になっているハズです。
高い給料には注意すべきですので、問い合わせたり、転職エージェントを使ったりして、確認する必要があります。
PR・キャッチコピー
やりがい、アットホームなどの抽象的なことが、最大の売り、もしくは唯一の売りの保育園は、少し怪しんだほうが良いでしょう。
医療・介護・福祉の業界でやりがいを打ち出だす保育園は、「人事どうした?」と思ってしまいます。
私は、これらの業界でやりがいという言葉は禁句だと勝手に思ってるんです。
なぜなら、やりがい搾取(やりがいという名のもとに低賃金で長い拘束をする)にしか聞こえないからです。
また、アットホームを最大の売りにしている保育園も、結構怪しいと思います。
もし、保育をしっかり分かっている人事担当であれば、アットホームという紛らわしい言葉は使わないと思うからです。
アットホームは家庭的という意味に取れますが、保育には家庭的保育という言葉がありますよね。更に家庭的保育は売りにすることではなく、小規模の保育園や少人数の時間帯であれば、当然のことです。
アットホームという言葉を使う人事担当者は、職員同士がアットホームな雰囲気であると言いたいのかも知れません。しかし、紛らわしい上に、保育士同士がメリハリ無く働くような職場のような印象を受けます。
残業時間
求人票に、残業時間について書いてある保育園と書いてない保育園があります。
しかし、保育園に残業はつきものです。そして、それがサービス残業になるかどうかは、ブラック保育園かどうかの分かれ道です。
「残業なし!!」と謳う保育園もたまにあります。本当にそれを目指しているのかも知れませんが、残業代が出るなら少しの残業くらいは許容範囲ではないでしょうか?
残業なしと書いてしまうと、残業は発生した時に「嘘をついた」ということになります。かなりのハイリスクな行為です。
それに職員が複数インフルエンザにかかってしまったり、保護者が何かのトラブルで長時間お迎えに来なかったりしたら、残業したりして乗り切るしかありません。
これ、普通のことですし、そんな突発的なことすら嫌がる保育士さんは少数でしょう。ただ、「残業なし!」と謳ってしまうと「残業あるじゃん」ってことで、こんな普通のことでも不満の元になってしまいますよね。
また、残業なしを目指すあまり、どんどん帰らされて仕事が残りまくるという懸念もあります。もちろん残業なしで完璧に回っている保育園もあるかも知れません。
ただ、残業がないということは、残業代もないということです。受け取る収入が減ってしまいますので、注意が必要です。(残業時給は、通常時給の1.25倍です)
あまり残業なしに拘りがない保育士さんは、自分の体力に合わせて月に4~20時間の残業がある保育園を選ぶのが無難でしょう。
固定残業・みなし残業
これはブラックと少し話がそれるのですが、「固定残業や見なし残業=ブラック」と勘違いしている保育士さんが多いので一応、書いておきます。
あらかじめ、給料に「固定残業代」などとして、一定の残業時間分が給料に含まれている場合があります。
これは、一般企業では結構当たり前のことなので、「固定残業=悪」ではありません。固定残業があることで、収入アップも見込めます。
また、月に16時間の固定残業代が含まれている場合は、その16時間が残業時間の目安になるわけです。その残業時間が苦でないならば、この固定残業制度は問題になりません。
ちなみに、固定残業というのは、絶対残業があるという意味ではありません。その時間分の残業代を固定で払うという意味です。つまり場合によっては、残業しなくても残業代を貰えるわけです。
固定残業時間内に残業を抑えるシフト作りをするはずですので、逆に分かりやすい制度と言えます。
[注意]ただし!固定残業を45時間つけてる企業は怪しいです。細かく書くと長くなるのでかなり省略ますが、45時間以上は原則として残業させられません。上限一杯働かせる気が滲み出てる上、それ以上はサービス残業にさせられる可能性があります。
賞与(ボーナス)
ボーナス、つまり賞与ですが、法的には支払い義務はありません。
ボーナスを無しなら無しに設定して良いし、業績が悪くて払えないと急に言っても良いんです。
当然、支払う額も会社の自由です。ボーナス年3回としていて、そのボーナスが1万円づつでも何の問題もありません。
保育園の経営は比較的、安定しています。しかし、安定しているけれど、頑張れば儲かるというビジネスモデルでもありません。
ちゃんと定員に達している保育園同士なら、収入に大差はないので、給料が安すぎたり高すぎたりするのはオカシイんですね。
給料が高いならボーナスが少ない、給料が低いならボーナスが高い。こんな状態になるはずです。
月々の給料が高い上にボーナスも4回…そうなると怪しくなってきますので、去年の実績などを確認した方が良いでしょう。
最後は保育園の面接・見学で判断
求人票を見て、ある程度の怪しさは判断できますが、面接や見学で判断を下しましょう。
面接時に、先程書いた通り、ハッキリしない給料等の説明だったりすると、入社後も色々とウヤムヤにされる可能性があります。
また、見学の際には、保育士さんの雰囲気や、施設の清潔感を確認しましょう。
結構見落としがちなんですが、やはり悪い保育園は、来客に対する挨拶がなかったりします。みんなの雰囲気を確認しておきましょう。
また、物がどのように扱われているかも重要です。ボロボロだったり汚いものだったり、ブラックほど物の扱いが雑です。
物が多くて一見ゴチャゴチャしていても、または古い建物でも、しっかり掃除が行き届いているかどうかを確認しましょう。
あとはスタッフポスターも確認しておきましょう。スタッフポスターで職員で若い職員に偏りすぎていて、ベテランがいない場合は、保育がちゃんとできていない可能性や、離職率が高い可能性があります。
おわり
求人票の給料の幅、キャッチコピー、残業時間の表記など、求人票で気にすべきポイントを上げました。
しかし、求人票なや面接などの説明で「分かりにくい・ハッキリしない」というのは相当に怪しいと思われます。
求人票だけでは判断が出来ませんので、面接や見学でもしっかりと判断しましょう。また、出来ることなら先程の求人票で気にすべきポイントについてを質問をするのがベストです。
ただし、質問するのが怖いとか、採用に不利になるかも…と思うなら、匿名でメールで質問したり、転職エージェントを使って確認してもらうのが良いでしょう。