やっていいの?保育士の医療行為(医行為)|保護者の依頼でもダメなものはダメ

やっていいの?保育士の医療行為(医行為)|保護者の依頼でもダメなものはダメ

保育士の医療行為って、どこまでがセーフで、どこからがアウトなのでしょうか?

実は、保育士は医療行為はしてはいけません。

セーフとかなく、医療行為は全部アウトです。

保護者から依頼されても、やってはいけないことは沢山あります。

断って良いか分からないというのは知識不足ですから、保護者から依頼されても充分な知識があれば、しっかりとお断りできますよね。

今回は、保育園の経営を10年経験し、現在は保育園のコンサルを行なっている私が、「保育士ができる医療行為ではないとされるもの」についてのご説明をします。

ただし、この医療行為との線引は、未だ全てが完璧に出来ている訳ではありませんし、おそらく完全な線引ができる日は来ないでしょう。



保育士の医療行為(医行為)はNG

本来は医行為と呼ぶほうが正しいようです。

”医療行為は何か”という話になると、医師・歯科医師・看護師が行う行為全般ですから、大量にありすぎますが、医療行為は全て保育士には無縁の行為です。

医療行為は、医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法などに定められている訳ですが、保育士ができることは一つもありません。

保育士が行うのは、観察と予防です。もちろん予防というのも、手洗いうがいの指導とか、皮膚を清潔に保つとか、その辺のことです。

しかし、保育園に看護師が常駐していれば良いですが、看護師が配置されていなかったり、看護師が休みだったり、看護師が居ない時間もあり、判断に迷うこともあります。

また、保護者が猛烈にお願いしてきて、受けて良いのか断って良いのか分からないことも多いですよね。保育士ができる行為については後述します。

ちなみに、医療保育士(病棟保育士)であろうと、医療行為をすることはありません。

たまに、医療保育士を「医療行為をする保育士」とか書いてあるサイトもありますが、嘘ですの注意して下さい。

院内保育とか医療保育士について、詳しく知りたい方はこの記事をご確認下さい。

医療行為(医行為)ではないとされるもの

 

平成17年7月に厚生労働省から通知された「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈についてが判断基準になります。

▶︎▶︎医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)

しかし、トラブルがあった場合は、刑事・民事の責任も考えないといけませんので、とにかく不安なことはしないのがベストです。

法律やその解釈を読んでも頭が痛くなると思うので、保育士さんに関係がありそうなものをピックアップします。

保育士がやって良いとされるもの

「やって良いとされるもの」という曖昧な表現にしているのは、結局は正確な状況が分からないと「やっていいよ!」と言えないからです。

とはいえ、あまり神経質になりすぎると何も出来ませんから、ささっとピックアップします。

◆保育園でやる可能性があるものでOKと言えるもの

  • 体温計測
  • 軽微な切り傷、擦り傷、やけど等の処置専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)をする
  • 医薬品使用の介助(軟膏・湿布・目薬・一包化された内服薬・鼻への薬剤噴霧 ):これは非常に重要なところなので、下に追加で書きます。
  • 爪を爪切りで切る・爪ヤスリでやすりがけ:爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がない。
  • 歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にする:歯周病がない場合の、歯磨きなど
  • 耳垢を除去する耳垢塞栓の除去を除く
  • 自己導尿の補助

これ以外のことを保育士が行うのはやめましょう。

医薬品の使用の介助については、少し掘り下げます。

医薬品使用の介助(軟膏・湿布・目薬・他の一般的な薬)について

要するに、与薬(投薬)の話ですね。

基本中の基本として、「薬を必要とする状態なら、子どもは保育園を休むべき」と周知するべきかと思いますが、現状はそうもいきません。

ただし、言い方が悪いですがハッキリ言いますと、保護者は「薬をやってくれ!」とお願いしてくるくせに、それで具合が悪くなったらクレームを言ってきます。

全員がそうではないですが、こう思っておいた方がいいです。

また、このトラブルの元である与薬に関する決まりが無い保育園は、しょうもない保育園と言えます。

しかしながら、与薬に関する知識は重要ということで、もう少し細かく見ていきましょう。

◆患者の状態が以下の 3 条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が確認している前提で…

  1. 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
  2. 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
  3. 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

誰が見ても大丈夫で、誰でも与薬できる薬じゃないと駄目ということです。

全く具合が悪くなくて、簡単に与薬できる場合以外は、保育士が判断するのはすごく難しいです。保育士は医療に関しては素人ですから。

色々その場で悩まずに、規則を作って周知しよう

保育士が、医行為や与薬の知識を得ること以上に必要なことは、以下のことを保護者に同意してもらい遵守してもらうことです。

  • 素人が医薬品を使用しますよ
  • 医師の処方したものしか受け付けませんよ
  • 薬袋などでしっかり区分されたものしか受け付けませんよ
  • 医師や看護師の指示や助言があることしかしませんよ

おそらく、保育園にある与薬依頼書みたいなものに書いてあるとは思いますが、ここを曖昧にすると何かあった時に保育園の責任にされます。

あくまで、保育園は責任を取らないことを、分かってもらわなければなりません。

それに、そもそもここまでの条件に当てはまっているからって、与薬を受け付けなければならない訳でもありません

例えば、ここまでの条件に当てはまっていても、薬の種類が何種類もあったり、回数が多かったりする場合は、お断りすることも必要です。

複雑でミスをするかも知れないからです。

保育士が薬を間違える危険性があったり、与薬に時間を取られ保育が滞る場合は、断るべきです。

保育士の保護者への対応の仕方で全然違う

厚生労働省の通知を元に、医療行為ではないと考えられるもの、保育園でやってもいいと思われるものを説明しましたが、だからといって保育園でやらなければならない訳ではありません。

保護者から頼まれた時に、「たぶん保育園では無理…」とか断る理由がふんわりしていると、それもまたクレームになります。

法律や厚生労働省の通知を元に対応していると言えば、ほとんどの保護者が納得します

もし、保育園にこれらの資料や規則がない場合は、保育園に規則を作ってもらうようにお願いしましょう。

子供の命を預かる仕事という自覚があるなら、自信のないことはしない。

おわり|保育士は保育の専門家だと再認識しよう

医行為についてのお話しでした。

  • 医行為は全部NG。
  • 医行為以外も判断が難しいことはしない。
  • 法律や規則に基づいて対応することを保護者に周知。

専門外のことをやると失敗しますので、”相手のためにやったのに相手に責められる”という、腹が立って仕方がない状況になります。

でも、当然のことです。専門外のことをやっちゃったんですから。

保育士は保育の専門家であって、医療の専門家ではありません。医療は医療の専門家に任せましょう。

こういう大事なことをしっかり規則化出来ない保育園は、保育園の責任なのにいざという時に現場の保育士に責任転嫁してくる可能性もありますので、ちょっと今後に不安ですね。

そういうことで、今回はおわり!



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